2011年3月26日

        申し入れ書

航空自衛隊の皆さん、東北関東大震災の緊急支援活動に邁進され、被災した現地の人々から感謝の気持ちで迎えられていることでしょう。イラクでの活動とは質的に異なる災害復旧支援活動は今後も続くことでしょう。
自衛隊の最も大切で本来的な職務遂行への賛意をここに表わします。

航空自衛隊小牧基地司令 谷井修平様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

この3月11日午後2時46分、東北から関東にかけて400kmにも及ぶ太平洋プレートの地殻変動によって、マグニチュード9.0(当初8.8)の巨大地震が発生し、その津波によって多くの人の命が失われました。25日付新聞では死者1万人を超し、行方不明者は1万7443人、自衛隊員や消防職員による遺体収容作業は難航しているという。
繰り返し放映された津波の猛威、その海の塊は船を持ち上げ、自動車を簡単に浮き上がらせ、家屋を根こそぎ押し流しつつ壊していきました。“津波は黒い”と言われていたその黒い津波を映像ではっきり確認しました。
今から115年前、1896年(明治29年)6月15日に三陸地方に大津波が襲い、岩手、宮城、青森の3県で2万2000人もの人が亡くなっています。津波の恐ろしさを代々語り継いできた三陸の人々、現在より人口が少なかったにもかかわらず、2万人余の人が死亡したのは、今回の巨大地震と同じような津波が発生し、リアス式海岸線、入江そして港に押し寄せ、陸に駆け上がったことによるものでしょう。
115年前の三陸津波災害を知るならば、今回の地震・津波は予想外といって済ますことはできません。津波の歴史を知る者、災害対策、安全対策を職とする者の「有史以来の」「未曾有」とか「想定外」を自他に連発している姿は見るに耐えません。
震災発生後、航空自衛隊小牧基地の輸送機がタービンを福島空港に空輸したとの報道がありました。また、コンビニ大手ローソンが被災者救援用のおにぎりを送るにあたって、陸路では輸送に時間がかかるということから、しかるべき手続きを経て小牧の航空自衛隊機によって被災地直近の空港に空輸したというドキュメント番組が22日、NHKで放映されました。
地震の発生直後に福島第一原発は緊急炉心停止しましたが、津波によって電源が切れ、しかも非常用電源が機能しなかったことにより、炉心冷却装置も停止し、原子炉燃料棒のウランやプルトニウムの崩壊熱によって炉内の水は蒸発し、水位が下がり、燃料棒がむき出しとなり被覆菅のジルコニウムが水蒸気の酸素と化合し、水素が発生しました。炉壁あるいは循環パイプの亀裂から水素が原子炉建屋上部に充満し、震災翌日には1号機で水素爆発を起こし、震災4日後には3号機でも水素爆発を起こしました。原子炉を冷やすために、自衛隊はヘリコプターで海水を撒き、その後、東京消防庁の放水車や生コン用の放水塔車で自衛隊員や消防職員が放射線を浴びつつ決死の放水作業にあたっています。中央制御室などへの通電作業の一環として、3号機のタービン建屋の地下1階のケーブル配線中に390万ベクレルの放射性物質の濃度に汚染された水で被爆した作業員が千葉の病院に搬送されました。肝心な冷却装置を稼動させるまでには多くの難関があるようです。
日本政府はアメリカ政府の福島第一原発の廃炉を前提にした支援を断り、福島第一原発を再稼動する道を選択しています。この方針は東京都の金町浄水場の放射性ヨウ素131の規制値を超えた検出などで明らかなように、放射性物質を原子炉外へ撒き散らすことを継続し、かつ原子炉・タービン建屋内外の作業員や放水作業をする自衛隊員、消防職員への被爆を強要するものです。これは誤った政府・東京電力の方針です。
毎日新聞3月25日夕刊の原子力安全委員長斑目春樹氏についての記事に「公の場に初めて姿を見せたのは22日の参院予算委。12日、菅直人首相の現地視察に同行し、『水素爆発は起きない』と説明したことや、中部電力浜岡原発運転差し止め訴訟の証人として07年、地震で非常用発電機が作動しない可能性を『割り切らなければ原発はできない』と述べた責任を追及された。」とあります。原発推進、原子力安全委のトップのこの見識こそが、この原発事故が人災であることを雄弁に物語っています。

イラクで航空自衛隊員は政府の方針によって、主に重武装をしたアメリカ軍兵士と物資、その他関係国の人員を空輸し続けました。
3月11日の震災発生の直前、東京都議会は「イラク戦争検証委員会設置の意見書」を政府に正式に提出することを起立多数で決議しました。賛成64(民主51、共産8、生活者ネット3、無所属2)。反対62(自民38、公明23、創新1)の僅差ですが、この決議の影響は大です。
私は空自帰還直後の2009年1月以降、イラクでの航空自衛隊の活動を検証してくださいと小牧基地の皆さんに申し入れをしてきました。
誤った政府方針・人命を危機に陥れる政府の決定が再び繰り返されることがないためにです。
             <ノーモア南京>名古屋の会 事務局
               社民党愛知県連合 平山良平
               西尾市高畠町4-75-3