2011年2月26日

        申し入れ書

エジプトからの“在外邦人の救出”は自衛隊機ではなく、チャーターした民間機及び民間定期便でした。航空自衛隊小牧基地の皆さんは在外邦人の救出訓練ではなく、自らのイラクでの空輸活動を検証をしてください。

航空自衛隊小牧基地司令 谷井修平様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

1月25日エジプトの首都カイロ中心部で始まった民主化などを求める民衆のデモンストレーションは、日に日に拡大し、2月11日ムバラク大統領の辞任によって、30年に及ぶ強権政治に幕が下りました。
エジプトのデモが始まったちょうど1週間前の1月19日、小牧基地を拠点に“在外邦人の救出輸送訓練”が行なわれました。“海外での災害や争乱の際にその現地の日本人を国外に安全に脱出させるための航空自衛隊機と海上自衛隊船舶との共同訓練”という報道でした。
この海外邦人の救出輸送訓練について、先月22日の「申し入れ書」に、元日本航空機長で自衛隊員でもあった信太正道さんの1993年10月13日付の朝日新聞『論壇』“海外邦人の救出は民間機で”を抜粋して認めておきました。海外邦人の救出については自衛隊機よりも信太正道さん主張の民間機の方が現実的で即応力があることを、空自小牧基地の皆さんこそ先刻承知のことと思われます。遠く離れたチュニジアやエジプトまで海上自衛隊の艦船がわざわざ航行していって空自の救出機から民間人を受け入れるというのはいかにも現実離れしています。1月19日の空自と海自の邦人救出訓練はどういう事態を想定してのことでしょうか。お隣の韓国は日本の自衛隊機での救出に難色を示していることから、少なくとも朝鮮半島での事態ではないと思われます。
エジプトでの反政府デモの拡大に伴って、日本政府はエジプトからの日本人旅行者救出のために自衛隊機ではなく民間チャーター機を派遣することを決めました。このことについて、共同通信の記事は「政府は31日午前、エジプトの騒乱状態拡大を受け、邦人救出のためチャーター機の派遣を決定した。第1便は現地時間1日午前にカイロ国際空港を出発し、ローマに向かう。同日中にカイロ、ローマ間を3往復する予定。外務省によると31日現在、エジプト国内には邦人1600人が滞在。チャーター機は180人乗りで、民間定期便も利用して速やかに邦人をエジプトから脱出させる。」とあります。山形新聞は「エジプトで足止めされていた日本人観光客ら約340人が31日夕、エジプト航空機で成田に帰国した。」と報じています。
 「エジプトの騒乱状態の拡大」の事態にあっても当のエジプト航空機が運行されていたことは、なかなか示唆に富むものです。
 2月17日の朝日新聞は報じています。「イラク戦争 開戦の根拠」、「大量破壊兵器の情報『捏造した』」、「亡命イラク人告白」の見出しがあり、本文は、「米国がイラク戦争開戦の根拠とした大量破壊兵器の開発疑惑について、情報をもたらした亡命イラク人男性が、フセイン政権を倒すためにでっちあげたことを初めて認めた。男性に取材した英紙ガーディアンが16日付紙面で伝えた。『カーブボール』の暗号名で知られる男性は(中略) 03年2月、パウエル米国務長官(当時)が国連でイラクの兵器計画隠蔽の『証拠』を提示。男性は、自らでっちあげた生物兵器施設のイラストをパウエル氏が掲げていたことに衝撃を受けた。その後ホテルに監禁されている間に、イラク戦争が始まったという。大量破壊兵器は結局、見つからず、市民を含む10万人以上が犠牲になった。男性は戦争による犠牲は悲しいとしつつも、『誇りに思う。イラクに自由をもたらすには他に方法がなかった』と、『世紀の大うそ』を正当化した。」と。
 このアメリカ・イギリスのイラク攻撃後の、イラク占領時に航空自衛隊小牧基地からC130H輸送機3機がイラクに派遣され、隊員は「世紀の大うそ」で始めたアメリカのその武装兵員を自衛隊の任務として空輸してきました。
1月19日の空自小牧基地を中心とした“在外邦人の救出輸送訓練”これを報道関係者に公開してまで行なった意図は何だったのでしょうか。
遠い海外、エジプトでの自衛隊機による邦人救出は絵空事でした。

イギリスの「イラク戦争参戦を検証する政府調査委員会」は1月21日午前、公聴会を開催し、ブレア首相(当時)に対する再喚問を始めたという。
航空自衛隊小牧基地の皆さん、前線に武装アメリカ兵を空輸した当事者としても、イラクでの航空自衛隊の活動を検証してください。

 

             <ノーモア南京>名古屋の会 事務局
               社民党愛知県連合 平山良平
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