2011年1月22日
申し入れ書
航空自衛隊機による“在外邦人の救出”はできるのでしょうか。韓国やアジア諸国で、そしてあのイラクで可能でしょうか。そのためにもイラクでの航空自衛隊の空輸活動を検証してください。
航空自衛隊小牧基地司令 谷井修平様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様
1月19日に小牧基地を拠点に“在外邦人の救出輸送訓練”が行なわれたとの新聞、そしてテレビ報道がありました。
海外での災害や争乱の際にその現地の日本人を国外に安全に脱出させるための航空自衛隊機と海上自衛隊船舶との共同訓練でした。
菅総理大臣の去る12月の“朝鮮半島有事の際に自衛隊機の派遣を”との考えに、韓国は快く応じる気配はありませんでした。過去の日本の植民地支配に対する韓国の国民感情がそれを許さないからです。
緊急時の海外邦人のその国外への脱出に自衛隊機は有効なのか。
「海外邦人の救出は民間機で」という考慮すべき一文があります。
〔(略)ベトナム戦争中(略)、外務省の邦人に対する退去勧告の後、米軍輸送機は使われず、ヘリコプターにより、わずか10人が救出されたのに過ぎない。残る169人はサイゴン陥落後も、何ら危害を受けることもなく現地に残っていた。もし自衛隊機が救出にあたっていたら、むしろ不測の事態による二次災害の危険性が極めて高かったのではなかろうか。(略)領空は「完全かつ排他的な主権を有する(国際民間航空条約)」のであり、民間機といえども、無断侵入した場合には、絶対に撃墜されないという保障はない。まして、軍用機の場合には、たとえうまく逃げ通せたとしても、相手国の国民感情に取り返しのつかない、しこりを残すことになろう。緊急時といえども、政府は自衛隊機の飛行経路にあたる国々に飛行許可を申請する必要がある。その際、民間機の場合なら比較的簡単に許可を得ることができる。しかし、軍用機はそうはいかない。まして、騒乱時においては、飛行許可を得ることは容易ではない。湾岸戦争の時、自衛隊機の派遣に対して、イラクは敵対行為であるとし、ヨルダンは中立を損なうという理由で許可を与えていない。ヨルダンからエジプトへの避難民の輸送は日本のキリスト教団体などからの募金によりチャーターされた外国の民間機により行なわれ、イラクで働いていてエジプトに逃れたベトナム人を輸送したのは、政府のチャーターした日本航空の特別機だった。このように、民間機の方が「緊急時の、在外邦人救出のための輸送」にはより適切だということになる。内乱などを含む戦時における文民は「戦時における文民保護に関する1949年ジュネーブ条約」があり、国際法によって保護が約束されている。したがって政府は、まず外交手続きにより、文民保護を紛争当事者に要請し、その後、適切な国際機関に仲裁・保護を求め、中立機関の保障を得た赤十字のマークを付けた航空機によって輸送する方が、より安全で確実であることはいうまでもない。政府専用機も、自衛隊機として登録されている以上、海外で非軍用機では通らない。また、軍用機に同乗している民間人が国際法の保護の対象になるのは疑わしい。第二次大戦末期、国際法の精神を無視して、武装兵士と軍需物資を搭載したために、多数の日本軍の赤十字船が海の藻屑となった。(略)緊急時には高度の国際線の経験を必要とする。二次災害を出してからでは遅い。将来とも、国際線の経験を積む機会の少ない自衛隊には出る幕はない。海外邦人としても、命が惜しいのなら、あわてずに、民間パイロットが操縦する赤十字機の救援を待つべきであろう。経験のある登山者は、暴風雨中に動いたりしない。〕と信太正道さん(元日本航空機長、自衛隊出身操縦士会元副会長)が1993年10月13日付朝日新聞『論壇』で述べています。
隣国韓国でも自衛隊機での救出に難色を示しています。秀吉の朝鮮侵略と植民地支配が今なお尾を曳いています。他のアジア諸国でも旧日本軍による侵略の影響はないのでしょうか。
航空自衛隊のイラクでの空輸活動はアメリカ軍の軍事輸送作戦に貢献したことでしょう。逆に言えば、イラクの人々にとってはその分マイナスの貢献であったことと思われます。アメリカ軍が完全撤退した後に、“緊急時の自衛隊機での救出”という事態が起こった時、日本政府の自衛隊機の派遣に、イラク政府及びイラクの人々はどのような対応を示すのでしょうか。
1月19日の空自小牧基地を中心とした“在外邦人の救出輸送訓練”は図らずも、自衛隊機は在外邦人の救出にとって有効かという問題とともに、将来イラクに自衛隊機を派遣することができるかという問題まで浮かび上がらせました。
航空自衛隊小牧基地の皆さん、“在外邦人の救出輸送訓練”を実施した当事者としても、イラクでの航空自衛隊の活動を検証してください。
<ノーモア南京>名古屋の会 事務局
社民党愛知県連合 平山良平
西尾市高畠町4-75-3