2010年3月27日

なぜ憲法9条1項違反の空輸活動をしたのか検証してください

航空自衛隊小牧基地司令 谷井修平様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

3月23日の参議院予算委員会で、鳩山首相は自衛隊の海外派兵について「国連が決議してOKを出しただけで、安心して自衛隊を派遣する考えを持ち合わせていない。」と述べました。
このことについて、翌24日の朝日新聞に「従来の政府方針通り、武力行使にあたる活動には憲法の制約上、参加できないという見解を示したものだ。」とあり、続けて「民主党の政策集では、国連の平和活動には武力行使を伴う場合を含め、日本政府の主体的判断の下に積極的に参加するとしている。この方針は小沢一郎幹事長の主張とは一致するが、この日の首相答弁で、鳩山内閣はその考えには立たないことを明示した。」とありました。
自衛隊の海外における活動については、①武力行使目的による「海外派兵」は許されないが、武力行使目的でない「海外派遣」は許されること(1980年10月28日政府答弁書)、②他国による武力の行使への参加に至らない協力(輸送、補給、医療等)については、当該他国による武力の行使と一体となるようなものは自らも武力の行使を行ったとの評価を受けるもので憲法上許されないが、一体とならないものは許されること、③他国による武力行使との一体化の有無は、(ァ)戦闘活動が行われている地点と当該活動の地理的関係、(ィ)当該活動の内容、(ゥ)他国との関係の密接性、(ェ)協力相手の現況、等の諸般の事情を総合的に勘案して判断されること(1997年2月13日衆議院予算委員会における大森内閣法制局長官の答弁)という政府の基準があります。
この政府の基準をもとに、名古屋高等裁判所がイラクにおける航空自衛隊の空輸活動について審らかに検証した結果、「少なくとも多国籍軍の武装兵員をバクダッドへ空輸するものについては、前記平成9年2月13日の大森内閣法制局長官の答弁に照らし、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。」と判断し、「現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動区域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。」と判決文に明示しました。
イラクを武力制圧しているアメリカ軍に抵抗する勢力は、日本の航空自衛隊のC130H輸送機が武装したアメリカ軍兵士を空輸していることを知っていたでしょう。それでも自衛隊の輸送機が撃墜されなかったのは、ミサイル被弾回避装置や操縦技術もさることながら、自衛隊の空輸活動がアメリカ軍による武力行使と一体化した行動ではあっても、イラクの人々に直接武力行使をしていなかったことによるものでしょう。幸運でした。
自衛隊と自衛隊員が今後再び憲法違反と裁判で断じられる空輸活動をすることのないよう、海外派兵が命じられることのないようにするため、海外派兵についての政府見解に照らして航空自衛隊小牧基地司令および隊員の皆様こそがイラクでの空輸活動を検証してください。
アメリカ政府はイラク攻撃開始から7年後の現在、なおイラクに軍を駐留させ占領を続けており、「イラク戦争」を検証していません。イラクからの帰還兵で、自らを「冬の兵士」と位置づけ、アメリカ軍兵士がイラクの人々にいかなることをしているのかを、自らの体験を証言することによって、アメリカ軍の作戦行動の実態を告発し、アメリカ政府のイラク占領を終わらせようとしています。彼らはアメリカ軍のイラクからの即時撤退を求める活動を通じ、アメリカの正義を回復させようとしています。
岡田外相は3月10日の衆議院外務委員会で、イラク戦争を支持、自衛隊を派遣した自公政権の対応をどこかで総括したいと言明した、と3月4日付岐阜新聞にありました。
憲法9条は日本政府に自衛隊の海外派兵について縛りをかけ、自衛隊員の命を守っています。しかし、粛々と命令に従って任務を遂行した結果が憲法9条1項違反であったというのが、航空自衛隊員の遂行した任務内容です。かようなことが今後再び起こることのないよう、航空自衛隊小牧基地の皆さんがこそが、イラクでの空輸活動をきちんと検証してください。 

<ノーモア南京>名古屋の会 事務局 
              社民党愛知県連合副代表   平山良平  
              住所 西尾市高畠町4-75-3