2009年5月23日


ブルーインパルスの曲技飛行よりも精強な行為
航空自衛隊小牧基地司令 谷井修平様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

5月18日、「ソマリア沖海賊対策」で海上自衛隊P3C対潜哨戒機が派遣されるのに伴い、航空自衛隊C130輸送機1機が小牧基地からソマリアの隣国ジブチに向けて出発した」と毎日新聞は伝えています。
先月の申し入れ書で私は「ソマリア沖海賊を理由に派兵されることのないように」を表題にし、空自派遣に危惧の念を表しておきました。現実なものとなってしまい残念です。出発した空自C130輸送機は、P3C対潜哨戒機2機の拠点となるジブチ国際空港の警戒にあたる陸自隊員に必要な通信機材などを輸送するという。
「ソマリア沖の海賊対策」の名目で派兵された自衛隊員も日本政府の「国益」や「国策」に基づくもので、ソマリアのためではありません。
海賊という海の強盗に対し、海の警察官たる海上保安庁の出航ではなく、海上自衛隊の出番とはやはり場違いです。自衛隊を海外展開させ、アメリカ軍などとの共同軍事行動をさせたい日本政府の意図の現われです。
2006年7月から2008年12月末までのイラクでの空自輸送任務のうち、武装した多国籍軍(アメリカ軍)兵士のイラクでの空輸任務については、「他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる」として名古屋高裁から憲法9条1項違反との判決を受けました。
派兵されたアメリカ軍兵士の自殺について『米兵自殺率倍増』と毎日新聞は一昨日、5月21日に1面トップで報道しました。イラクやアフガニスタンでの対テロ戦争に従軍した米陸軍兵の昨年の自殺率がイラク戦争前に比べて倍増し、ベトナム戦争以来初めて一般の米国民の自殺率を上回ったという。キアレリ陸軍副参謀長は今年3月、連邦議会で「陸軍はストレスにさらされ、疲弊している」と指摘、「兵士の従軍長期化が自殺の大きな要因」と述べたという。
2001年、ニューヨーク世界貿易センタービルへの2機の飛行機の突入、アメリカ国防総省ペンタゴンへの「飛行機の激突」という9.11事件をきっかけに当時のブッシュ・アメリカ大統領はアフガニスタンへの一方的な対テロ戦争を始め、2003年3月には「イラクには大量破壊兵器がある」などと理由をもとにイラクへの一方的な攻撃を開始し、現在なお占領を続けています。アフガニスタンもイラクもアメリカの軍事攻撃を受ける理由はありません。アフガニスタン、イラクの両国民も、その戦争に駆り出されたアメリカ軍兵士も被害者です。
5月13日の中日新聞は、主要空自基地では唯一ブルーインパルスを飛ばしておらず、イラク復興支援をトラブル無く完了したとの自負もあり、「精強な空自の象徴を見てほしい」との谷井基地司令の意向を伝えています。ブルーインパルスと比べ派手さはないにしても、戦闘地域のバクダッド空港で、離着陸時のロケット砲撃やミサイル攻撃を回避するためにスパイラル航法で輸送機を操縦するパイロットにより「精強さ」があるであろうし、輸送を主任務とする空自小牧基地の司令が、派手さに目を奪われ、ブルーインパルスを精強な空自の象徴と紹介するのはいかがなものでしょうか。曲技飛行が精強さの徴なら、球形の金網の中でのオートバイの曲乗りも精強であろうし、昔のカミナリ族や今時の暴走族の走行も精強の表れかもしれません。
昨日5月22日の毎日新聞に「核廃絶提唱の米大統領激励 歴代国務長官ら」との記事があり、核兵器のない世界を訴える国務長官と同じ政策を4月のプラハで演説したオバマ大統領を熱烈に支持した。大統領も「米国が指導力を発揮することが絶対に必要だ」と決意を新たにしたとあります。
現役米軍将校として2006年6月にイラク従軍拒否声明を発表し、軍法会議にかけられたエーレン・ワタダ陸軍中尉について、米陸軍は5つの罪状のうち任務不履行など3つの主要な罪状を不問にした。裁判は続くが、弁護人は「大きな勝利」と歓迎している。米軍のイラク攻撃は不正義であり合衆国憲法にも違反するとし、イラク従軍を拒否したエーレン・ワタダ陸軍中尉の行為はアメリカ軍兵士の良心を代表した行為であるとされ、多くの支持を得ています。
おそらく、本当の精強さとは、例えば、オバマ大統領がアメリカ大統領として核廃絶を表明し、人類の平和への新たな一歩を踏みだそうとしたことをいい、エーレン・ワタダ中尉が陸軍中尉としてイラク従軍を拒否し、アメリカのイラク攻撃の不正義を糺そうとしたことをいうべきでしょう。

<ノーモア南京>名古屋の会 事務局 
              社民党愛知県連合副代表   平山良平  
              住所 西尾市高畠町4-75-3