2008年11月22日


航空自衛隊のイラクからの即時撤退を求める申入書

航空自衛隊小牧基地司令 石野次男様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

あと1ヶ月、イラク特措法に基づく航空自衛隊のイラクでの活動に終止符がうたれます。あと1ヶ月、心配しつつ喜びたいと思います。
航空自衛隊のイラクでの空輸活動は日本政府の姿の反映です。アメリカのブッシュ大統領の意を受けてイラク特措法を作り、航空自衛隊員とC130H輸送機3機をクウエート・イラクに派遣し活動させました。
憲法第9条があり、イラク特措法があり、武力行使が禁止されているにもかかわらず、航空自衛隊員200人が粛々と任務を遂行していたイラクでの空輸活動について、名古屋高等裁判所は、自らも武力の行使を行なったと評価を受けざるを得ない、もっとはっきり言えば、日本はイラクで戦争をしているとの判断をしたのです。名古屋高裁は、航空自衛隊のイラクでの活動について、「多国籍軍の武装兵員を定期的かつ確実に輸送しているものであるということができ、現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であるといえることを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為に必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものということができる。少なくとも多国籍軍の武装兵員をバクダッドへ空輸するものについては、前記平成9年2月13日の大森内閣法制局長官の答弁に照らし、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。よって、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。」と違法かつ違憲の判断をしました。
この違憲判決を受けて、田母神俊雄当時の空幕長は「そんなの関係ねえという感じだ」と言い捨てた。今にして思えば、検証もしないで独善的に物言いをしてしまう田母神氏ならではのことです。航空幕僚長を更迭された原因ともなった彼の『日本は侵略国家であったのか』と題する「懸賞論文」の冒頭部分の3行を引用すれば、「日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了解を得ないで一方的に軍を進めたことはない。現在の中国政府から「日本の侵略」を執拗に追求されるが、・・・」とある。
<ノーモア南京>名古屋の会に所属するものとすれば、その間違いを指摘せざるをえない。1937年8月23日未明に上海郊外揚子江岸の呉淞に「敵前上陸」した名古屋の第3師団第6連隊、岐阜の同第68連隊は中国の了承を得た上での上陸作戦なのか。11月5日の上海の西、杭州湾金山衛に上陸した第6師団なども中国に了承を得た上での上陸作戦であったのか。否です。だからこそ侵略国家であったのです。田母神氏の「懸賞論文」は、こうであるといいなという自分の願いを、他人の著作を引用して書き並べたもので、作文であっても、およそ論文ではありません。
「戦争は組織者と命令者と実行者がいないとできない。」10年以上前、元日本軍兵士が話していました。これでいえば、空自のイラクでの空輸活動は日本政府が組織者であり、命令者は防衛長官後に防衛大臣以下派遣命令をだすものであり、実行者は派遣され空輸活動に直接たずさわる隊員です。この三者のいずれからも違法、違憲の声がなく、市民の中から、自衛隊のイラク派兵は違憲であるとの確信が裁判の原告となった。政府と自衛隊からは証拠提出がほとんどなく、原告側の膨大な準備書面、証拠が法廷に届けられた。名古屋高等裁判所民事第3部は、航空自衛隊のイラクでの輸送活動について違法かつ違憲の判断をだし、司法の責任を果たしました。この司法判断がなかったら政府と自衛隊の更なる暴走がはじまります。なぜなら、政府にも防衛省にも自衛隊員にも「イラクで日本が戦争をしている」という自覚がないからです。「そんなの関係ねえ」発言がその氷山の一角かもしれません。
名古屋高裁の違憲判決は実に偉大です。政府に自衛隊海外派兵について厳しいチェックポイントを示し、自衛隊員には武力行使に関わらせないよう、自衛隊員を死地に赴かせないように政府に枠をはめ、日本国民と世界に向けて日本は戦争を放棄し、あらためて平和国家への道を歩み始めたことを宣言したことになるからです。この名古屋高裁判決を聞いて、「この歳まで生きていて良かった」と感想を述べられた戦時中学徒動員で軍需工場で働かされた高齢者がいました。
あと1ヶ月、空自のイラクでの輸送活動によってイラクの人びとにどのような影響が及ぶのかは残念ながら分かりません。C130H輸送機3機と自衛隊員がイラクを撤退し、日本に生還することをこの国の憲法と共に待っています。正月を家族と共に過ごせますように、自衛隊員もイラクの人びとも、それぞれふるさとの地で、心安らかに。

 

<ノーモア南京>名古屋の会 事務局 
              社民党愛知県連合副代表   平山良平  
              住所 西尾市高畠町4-75-3