2008年10月25日


航空自衛隊のイラクからの即時撤退を求める申入書

航空自衛隊小牧基地司令 石野次男様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

先月、9月11日に町村官房長官が「年内をめどに航空自衛隊の任務を終了させる方向で検討に入った。」と述べ、林防衛相も「国連決議が年末に切れる中、イラク政府と調整し、活動を年末までに終了するという検討に入ることにした。」との新聞報道がありました。撤退に向けた動きはどうなっているでしょうか。1日も早い日本への生還を望んでいます。
「10月4日イラク駐留ポーランド軍は南部ディワニヤで任務終了の式典を行ない10月中に900人が完全撤退する」という新聞報道もあり、外国軍のイラクからの撤退は進み、残るはどこの国の軍隊でしょうか。
アメリカ軍のイラク駐留の根拠は「安全保障協定」です。国連安全保障理事会の決議に基づくイラク政府とアメリカ政府との「安全保障協定」ですが、その駐留期限はこの12月末となっています。来年1月以降の新たな安全保障協定案は、2011年以降にもアメリカ軍の駐留継続の含みがあり、駐留アメリカ兵犯罪を裁けないような免責特権があることから、協定は未だ成立していません。新聞報道によれば、イスラム教シーア派与党連合・統一イラク同盟が2011年の米軍撤兵を強く求め、ダアワ党は犯罪関与アメリカ兵に対するイラク側裁判権を要求し、シーア派の対米強硬のサドル師派は協定拒否のデモを繰り返しているが、北部のクルド政党は協定推進であるという。今後2ヶ月間のイラク国内の「安全保障協定」への動行が注目されます。
日本政府の「犯罪に関与したアメリカ兵への裁判権放棄の密約」を示した公文書が10月23日、国際問題研究者・新原昭治さんによって発表されました。アメリカ国立公文書館に保管されている1953年10月28日付の原文には、「日本側は重要事件以外の裁判権を放棄する」との密約があり、その結果、「1954年から1963年で、日本に裁判権があったアメリカ兵の犯罪のうち、年89%から97%、2300件から4600件で裁判権が放棄された」とアメリカ陸軍の『アメリカ兵への裁判権行使統計』に記されているという。河村官房長官と外務省は「密約はない」とのコメントをしたが、日本の当該文書を公開すれば明らかであり、コメントどおり密約がないならば、日本側文書をアメリカ政府に突きつけ、密約があったとしたならば、犯罪関与のアメリカ兵を「重要事件として」どんどん裁判にかければいいことです。いずれにしても駐留アメリカ兵犯罪の裁判権を放棄するようなことがあってはなりません。
イラク国内での、犯罪関与アメリカ兵の裁判権を要求するイラク側の要求は正当なものであり、それを免責特権としてイラクから裁判権を奪うアメリカ政府の「安全保障協定案」は国際的に見て重大な主権の侵害にあたるものです。
「イラクには大量破壊兵器がある」といってイラクを一方的に攻撃し、占領し、犯罪関与アメリカ兵の裁判権も奪うアメリカ政府、そしてその実行部隊であるアメリカ軍兵士をイラクの人びとはどう見ているのでしょうか。
「大量破壊兵器がある」といってイラク国土を侵略したアメリカ軍は、そのとき破壊した官庁ビル、学校、病院、橋梁、上下水道、民家を修復しましたか。
一方的に攻撃して死傷させてしまったイラクの人びとに、正当な賠償と治療をしましたか。
何よりも、理由もなく一方的にイラクを攻撃したことを、アメリカ政府はイラク国民とイラク政府に誠実に謝罪したということを聞いたことがありますか。
湾岸戦争とこのアメリカ軍のイラク攻撃で多くの劣化ウラン弾が撃ちこまれ、標的を破壊し、飛散した弾頭の放射性物質によって、イラクの子どもたちが被爆し、様々な放射線障害にさいなまされています。サマーワに駐留した陸自隊員にも放射線障害がもたらされるかもしれません。空自隊員はイラクの砂嵐を吸わなかったですか。アメリカ政府は劣化ウラン弾の放射性物質と子どもたちの放射線障害との因果関係を認めてはいませんが。
ブッシュ大統領やアメリカ政府首脳らはイラク攻撃で、多くを破壊し、多くの人々を死傷させてしまったことに何らの痛みを感じていないようです。
2003年3月のイラク攻撃と占領から5年半、散々アメリカ軍に国土全体を荒らされたイラクの人びとにとって、もはや米軍は恐怖の対象から、撤退させるべき対象としてはっきり浮かび上がっているはずです。
イラクの人びとは新たな「安全保障協定」に反対し、12月の協定の期限切れを目指して議会内外で様々な運動を展開するでしょう。2011年を待たずに、アメリカ軍が撤退せざるを得ない状況がでてきました。アメリカの内外情勢の変化です。ブッシュ大統領の任期が切れること、アメリカ発の金融恐慌とアメリカ政府の財政支出、イラク・アフガニスタン戦争での膨大な戦争継続経費、そして、世界各国の対アメリカ従属政策からの脱却の動きです。ポーランド軍のイラクからの撤退も、日本政府のあっさり空自撤退の決定もその一つかもしれません。
武装したアメリカ軍兵士を空輸し、名古屋高裁からイラク特措法にも憲法9条1項にも違反することが認められた空自の活動、そのC130H輸送機を、アメリカ軍・イギリス軍と同一視することなく、撃墜しなかったイラクの人びとに感謝しつつ、「安全保障協定」にイラクの人びとがどう対処し、アメリカ軍撤退の道筋をつけるのか、文明発祥の地の、砂漠の民の知恵が結集されるべきこの二月です。
イラクの人びとの願いは、外国軍のイラクからの撤退です。
日本政府と航空自衛隊のすべきことは一つです。

<ノーモア南京>名古屋の会 事務局 
              社民党愛知県連合副代表   平山良平  
              住所 西尾市高畠町4-75-3