2007年12月22日

航空自衛隊のイラクからの撤退を求める申入書

 

航空自衛隊小牧基地司令 石野次男様

航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

 

 毎日新聞の11月20日付朝刊仲畑流万能川柳に「戦争は普通の人がヒトゴロシ」とありました。

70年前、7月7日の盧溝橋事件を発端にして、中国との全面戦争に日本は突入していきました。この愛知でも名古屋の第6連隊は8月23日未明に上海近郊の揚子江岸に敵前上陸し、さらに上海攻防戦に投入されました。第6連隊長も戦死するほどの激戦でした。名古屋第6連隊は兵士の死傷があまりにも多く、幸か不幸か、南京攻略戦に参加できず、南京大虐殺にかかわりませんでした。南京攻略戦に参加した日本軍部隊は食糧の補給もままならず、「ススメ、ススメ」の命令のもとに南京へ攻め上りました。食糧は現地調達という名の徴発です。南京攻略直後、多くの中国兵が投降しましたが、食糧もなく「始末に困る」ということで捕虜は南京城の内外で「処分」され、とりわけ死体の始末に都合のよい揚子江岸で大量「処分」が行なわれました。 

62年前まで、徴兵制がありました。職業軍人でなくとも、兵隊にとられ、戦場にかりだされ、殺し・殺される環境に置かれました。戦後62年間、憲法のもと、戦前のような、殺し・殺される外国との戦争という環境に、幸いにして圧倒的多数の日本国民は置かれていません。この外国との戦争をしないこの日本の社会環境は62年前初めて出現したわけではありません。

戦国時代からの戦乱の世を関が原の戦いで勝ち、江戸に幕府を開き、鎖国政策をとり外国との戦争を抑止し、民百姓に戦乱の悲哀を舐めさせることなく267年間、外国と戦をしなかった日本社会が江戸時代です。

私個人の名前を出し、月一度の「航空自衛隊のイラクからの撤退を求める申入書」を書き続け、今回が22回目となりました。新基地指令石野次男様においては今回が初めてです。「<ノーモア南京>名古屋の会」の事務局をしております。この会にかかわり19年になります。「ノーモア広島」「ノーモア長崎」が原爆投下をするな、核戦争を決して起こしてはならないということならば、「ノーモア南京」は南京大虐殺を二度と人類史上において再現させてはならないということです。

軍民を殺し、古代からの図書・食糧・家財を奪い、家屋を焼き、女性に暴行をはたらくなどあまりにも酷い南京大虐殺は、日本人として認め難いことです。日本人は残虐な民族かという問いに、江戸時代は一つの答えを与えてくれます。

アウシュヴィッツをはじめ多くの強制収容所で600万人のユダヤ人を死に至らしめたドイツ人は残虐な民族なのか。現在のイスラエルはパレスチナの地を占領下に置き、高さ10メートルものコンクリートの壁を延々と作り、土地と民を分断して、ドイツ人にされたと同じような、まるで大きな収容所のような生活をパレスチナの人びとに強いています。戦争あるいは軍事占領のような、人間が人間でなくなる社会環境を決して作り出してはならないということです。そのための、一人ひとりが社会的にできることは必ずあります。この申入れもその一つです。

イラクに派兵(派遣)されている航空自衛隊員・C130輸送機はアメリカ軍兵士と物資を輸送しています。戦争・占領そのものの良し悪しはともかく、兵員・物資の輸送はそれに不可欠なものです。

 

 

ブッシュ大統領・ブレア首相によって始められたイラク攻撃は、「イラクには大量破壊兵器がある」「アルカイダとフセイン大統領とは関係がある」という理由で開始されました。2003年3月20日のことでした。もうすぐ5年です。攻撃開始1年もせずして攻撃理由とされた情報は事実ではありませんでした。ブッシュ、ブレア両首脳ともそれを認めました。にもかかわらず、16万人とも言われるアメリカ軍は自国に撤退していません。この日本があらぬ理由で他国から攻撃を受け占領されたら、自衛隊はどうするのでしょうか。

アメリカ軍はフセイン大統領の宮殿とイラク石油省のビルは破壊しませんでした。他の省庁のビルは攻撃し破壊しました。石油新法を制定させ、この後何年もアメリカの石油企業が利益を得るように圧力を議会にかけています。ブッシュ大統領はイラクの石油支配のために、理由を作り上げ、攻撃を仕掛け、占領しています。

日本の当時の小泉首相は国際的に真っ先にアメリカ・イギリス軍のイラク攻撃を支持しました。続く安倍首相も支持し、福田首相も支持し航空自衛隊を未だにイラクに留め、アメリカ軍の兵站・輸送活動を担わせています。

70年前、国策として軍隊・兵士を中国に派兵し、戦闘させました。70年後の今、日本政府は国策として航空自衛隊をイラクに派兵し、アメリカ軍の兵站活動の一端を担わせ、イラク占領に翼をかしています。

陸上自衛隊は18ヶ月前にイラク南部サマーワから撤退しました。ブレア首相からブラウン首相に代わり、イラク南部バスラからイギリス軍が治安権限をイラク軍に譲り撤退を始めます。アメリカ国内では13ヶ月前のアメリカ中間選挙でブッシュ共和党は敗北し、アメリカ国民の意思は、はっきりと示されました、「ブッシュ大統領よ、軍をイラクから撤退させよ」と。

4日前、守屋武昌前防衛政務次官が現金収賄容疑で再逮捕されました。防衛省の装備品納入で便宜を図った見返りに軍需専門会社「山田洋行の元専務から現金約363万円を受け取ったとして東京地検特捜部が逮捕したという。防衛政務次官が何年にも渡って休日に軍需専門商社の役員と、しかも夫婦連れでゴルフをやっていたなどは、日本は軍事的にまったく脅威のない国際環境に置かれている証明です。

ブッシュ大統領はアメリカ軍をイラクなど他国の資源略取のために使い、兵隊と国税を使い捨てにしています。

日本政府高官は他国の脅威を煽って装備品を購入し、接待や現金を受け取っています。交戦権を認めない憲法がかろうじて自衛隊員の命を守っていますが、日米同盟などと声高に言い立て、ブッシュのような好戦的な大統領の意にそう方向に自衛隊を動かせば、自衛隊員が、そして国民の命が危うくなります。

自衛隊員の命を守るべく、小牧基地指令からもイラクからの空自撤退を具申してください。

イラクの空から日本の空に戻れ、航空自衛隊員は。