2010年11月27日


     申し入れ書

隣国では砲火を交える事態が生じてしまいました。自衛隊が海外派兵されることがないよう、イラクでの活動の検証をしてください。

航空自衛隊小牧基地司令 谷井修平様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

砲火を交える結果を引き起こした軍事演習は「開戦」であり、民間人と兵士に死傷者がでてしまいました。やってはならないことは軍事演習の類であり、やるべきことは軍事的緊張の解消です。双方の対話の再開と、民間の交流です。
11月23日午後、韓国軍が境界線(朝鮮民主主義人民共和国が主張する)を侵犯して軍事演習をしたことを理由に共和国軍が大延坪島(韓国領)を砲撃し、これに韓国軍も応戦したという。
24日の朝日新聞朝刊は「北朝鮮、韓国に砲撃」と、毎日新聞も「北朝鮮が砲撃 韓国応戦」とそれぞれ1面の見出しにしました。朝日は地図に国連軍が設定した「北方限界線」と「北朝鮮が主張する境界線」を併記しているが、同日の毎日は「北方限界線」のみを印している。
インターネットのmsn産経ニュース(24日午前12時31分)には、「午前8時20分、南北非武装地帯に近い都羅山に位置する韓国軍の通信施設に、北朝鮮から1枚のファックスが届いた。韓国軍が大規模な定例訓練の一環として延坪島付近で射撃訓練を計画しているとして、北朝鮮の「領海に撃ったら看過しない」との内容だった。韓国軍は予定通りの訓練実施を通告し、島の自走砲部隊が午前10時半から午後2時25分まで島南西の韓国側海域に向け射撃。ところが同2時34分ごろ島の北約10キロに位置する北朝鮮のム島などから砲撃が始まった。(共同)」とあります。
「北方限界線」は朝鮮民主主義人民共和国の海岸寄りに引かれており、これを韓国は当然視するも、共和国にとっては到底是認できない境界線でしょう。「北方限界線」内での韓国軍の軍事演習を、共和国は領海侵犯とみなし、双方とも、相手が先に砲撃したと主張しています。
領海・領土を侵犯しなければ砲撃しないという意思が両国にあり、それ以後の戦闘が現時点でもないことが和平への望みです。只、共和国の砲撃が大延坪島の民家にも加えられたということに対しては誰もが肯定することはないでしょう。韓国軍の応戦による共和国側の軍民の被害については報じられていませんがおそらくそれはあるでしょう。
過去にも何度もこの境界線をめぐって小競り合いや戦闘が起こっていますが、同じ民族であるからこそ、双方が納得いくような境界線を確定する作業をすべきです。開城工業団地では南北共同で製品作りをやり、南北離散家族の面会事業をやっている両国だからこそ、紛争の火種をなくすためにも、境界線の確定作業をすべきです。
今回の砲火の切っ掛けが双方とも譲れぬ境界線を侵犯した軍事演習であるとしたら、どちらが砲撃を仕掛けたのかは、朝日、毎日新聞の見出しのような「北朝鮮が砲撃」と単純に書けるものではありません。引くに引けないところに追い込んでおいて相手が先に砲撃してきたから砲撃(応戦)したというのでは、死傷した民間人・兵士とも浮かばれません。

日本国憲法第9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。」であり、国民全体にこの覚悟を求めています。
日本政府がこの憲法を誠実に遵守し、自衛隊を国際紛争の解決手段として使うことがないならば、朝鮮半島での今回の事件のようなことで自衛隊員が死傷することはありません。
日韓の外交ルートはあるも、日朝の外交ルートがほとんど存在しないことが日本政府の弱点です。1965年の日韓条約によって35年間にわたる植民地支配の清算が十全ではないにしても済んでいますが、2002年9月の日朝平壌宣言はあるも共和国との植民地支配の清算は何も行われていません。
今回の事件について、菅首相は「許しがたい蛮行」といっていますが、1875年の江華島事件以後、日本は朝鮮半島で「許しがたい蛮行」をしなかったのでしょうか。この国の首相は、未だに植民地支配の清算を行っていないことを自覚しているのでしょうか。日本の「同盟国」というアメリカはその軍がイラクとアフガニスタンで砲撃や無人飛行機での空爆を行っていないのでしょうか。「許しがたい蛮行」などと簡単に言える立場にはありません。
航空自衛隊がイラクから帰還して2年になろうとしています。政権交代後でもこの政府はイラク派兵の検証も、反省も行なっていません。

紛争の火種を友好の火種に転換する双方の作業と交流が必要です。
航空自衛隊小牧基地の皆さんは当事者として、イラク派兵の検証をしてください。
              <ノーモア南京>名古屋の会 事務局
               社民党愛知県連合 平山良平
               西尾市高畠町4-75-3