2007年11月24日

航空自衛隊のイラクからの撤退を求める申入書

航空自衛隊小牧基地司令 浮須一郎様

航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

 守屋武昌前防衛政務次官は11月15日の参議院外交防衛委員会において、軍需専門商社からのゴルフ接待や宴席接待、次期輸送機CXのエンジン選定にかかる関与について証人喚問を受け、「多くのまじめに働いている職員の信用を落とした」などと自責の念を口にしました。 
この証人尋問に先立ち軍需専門商社の山田洋行米津佳彦社長は参考人質疑において、守屋氏へのゴルフ接待は8年間で300回以上、総額1500万円以上と明らかにしました。2000年4月のゴルフ交際を禁じた自衛隊員倫理規定施行以降の6年間に200回以上のゴルフ接待が行なわれたという。防衛政務次官を勤めるトップがこれでは倫理規定は有名無実でしょう。守屋氏は、アメリカ国防総省日本部長ジェームズ・アワー氏が来日したとき神田の料亭に接待され出向くと、すでに山田洋行の(当時専務)宮崎元伸氏がおり、次いで額賀氏が顔を見せたが、最初に帰った、他の政治家も同席した、という。政治家が宴席にいたことについて、福田首相は「そういう会合に出ることは政治家としてよくあることだ」と訪米前に記者団に語ったと新聞に載っています。
 軍需専門商社専務からのゴルフ接待をイラクの空を飛んでいる自衛隊員は受けることはないでしょう。神田の料亭で接待されることもないでしょう。イラク派兵を決めた政治家がイラクの空を何度も何度も往復飛行することはないでしょう。
 朝日新聞16日朝刊に、15日午前中の民主党小沢代表へのインタビュー記事がありました。「日米関係を心配する向きがあるが」との質問に対し、「何の心配もない。ブッシュ大統領なんて米国民に支持されていないんだから。何で気兼ねするんだ。いま米国内でもブッシュ大統領の政策は批判の的だ」と小沢氏は答えています。ブッシュの政策の批判の的は、アメリカ国民にとってはイラク攻撃と占領政策で、ブッシュ大統領のこの11月の不支持率は70%以上といいます。
 航空自衛隊員がイラクの空でアメリカ兵などを輸送しているのは、イラク国民のためではありません。ブッシュ大統領のイラク政策に貢献しているだけでしょう。そもそも「イラクには大量破壊兵器がある」「フセイン大統領とアルカイダとは関係がある」との情報でイラクを一方的に攻撃し、そのまま占領を続けているブッシュ大統領に道理があるはずがありません。イラク攻撃と占領の実態がアメリカ国民に知れ渡るに従ってブッシュ大統領の支持率が下がり、民主党の小沢代表までもがこのように公然と言い放つまでになっています。政府の命令によって自衛隊員は動かざるを得ないでしょうが、・・・。
 70年前、日中全面戦争が開始され、この名古屋に師団司令部がある第3師団第6連隊(名古屋)の兵士たちも8月15日の動員令によって上海に急派され、そのまま突撃命令を受け、揚子江岸呉湘に敵前上陸し、2ヶ月にわたる上海攻防戦を繰り広げ歩兵の三分一が死傷し連隊としては戦闘能力を失うような惨憺たるものとなったという。同年11月5日の日本軍第十軍の杭州湾への上陸作戦によって中国軍を挟み撃ちにすることによってようやく上海を陥落させ、続く南京攻略戦へと戦線が移っていきました。 
70年前の11月24日付の名古屋新聞を見ると、「常州、杭州に巨弾の雨」との見出し「【上海二十三日發同盟】陸軍航空隊は二十三日早朝海軍機と連繋、地上部隊の猛襲に呼応して常州附近より西方に潰走する敵を急襲、さらに一部は杭州に飛び同地附近
の敵陣地に反復爆撃を敢行した」とあります。「南京に中立地帯 現地外人當局 我方

に提議」との見出しで「【上海二十三日發同盟】わが南京攻撃に際して南京市内一部地域を中立地帯となし戦禍の巷から免れんとする案はかねてより各國現地當局者によって討議されてゐたが今回いよいよ英米獨およびデンマーク人十五名よりなる南京中立地帯委員会が組織され今夕上海駐在アメリカ總領事を通じてわが上海總領事に對して中立案を提議申立をなし来つた・・・」とあります。南京に残留したこの外国人が2週間後には南京大虐殺の目撃者、記録者となるのです。
渦中にあってみれば、敵味方を問わず兵士たち、そして無辜の民らはどうしようもない事態の推移にあって、ただただ身を守ることが精一杯であったことでしょう。 
しかし、先の大戦を経て日本国憲法をもち、とりわけ第九条をもつこの日本政府が、自衛隊を海外に派兵するなど、憲法制定当時にはおよそ考えられません。自衛隊創設を機に参議院が1954年6月2日に「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」を全会一致でしました。この先人の戒めを忘れてならないでしょう。
アメリカのブッシュ大統領の勝手な理屈をつけたイラク攻撃と占領に航空自衛隊を派兵し、アメリカ軍の輸送任務の一端を担わせ、日本政府がアメリカのイラク占領を支援し、ブッシュ大統領に媚を売るなどは尋常ではありません。70年前の海軍航空隊、陸軍航空隊の直接の爆撃とは違うにしても、空輸という重要な兵站活動をすることは「参戦」あるいは「占領加担」していることにならないでしょうか。もし、日本がイラクの立場にあるとしたら、航空自衛隊の空輸にあたることを容認できるでしょうか、その空輸を復興支援などとどうして思うことができるのでしょうか。相手の立場に立つとよく分かります。
 「イラク復興支援隊第13次隊の約100人が17日、小牧基地に帰還した」との新聞報道がありました。隊員が無事で帰還できたことそのことは幸いです。情報公開請求による政府の「情報公開」では、C130輸送機・空自隊員が何を空輸しているのかまったくもって不明です。その名のとおり「イラク復興支援」ならば、何をどこに、どれだけ空輸し、どれほどイラクの復興とイラク国民に貢献しているかを、日本国民どころか、世界に向って空輸実績を明らかにすべきだと思います。
 昨日、横須賀港に補給艦「ときわ」がインド洋から帰還しました。
 民主党は「イラク復興支援及び安全確保に関する特別措置法の廃止法案」を参議院に提出しました。民主党及び野党はこれを審議・可決し航空自衛隊をイラクの空から日本に帰還させる意図です。衆議院で自民党・公明党がブッシュ大統領の意を体して反対の議決をするであろうけれども。たとえ日本の衆議院はそうであっても、イラク及び日本を含む世界の平和を求める人びと、そして、アメリカ国民全体の意思はアメリカ軍のイラクからの撤退です。
 53年前の参議院本会議の決議は簡にして明瞭なものです。「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照らし、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。右決議する。」
 航空自衛隊のイラクからの撤退を求めます。
 
 
              <ノーモア南京>名古屋の会 事務局 平山良平
              社民党愛知県連合副代表 平山良平  
              住所 西尾市高畠町4-75-3